赤字会社の代表社員が被害者である場合に休業損害を認めた事案
前年度が赤字であったコーヒーの卸・販売等を目的とする合資会社(従業員約25名)の代表社員が交通事故に逢った場合に、休業損害を認めた事案があります(東京地裁平成22年6月23日判決)。
上記事案においては、裁判所は、原告は、本件事故当時、社員と従業員を併せ、約25名の合資会社の代表社員の地位にあり、その業務は、取引先や融資先との折衝のほか、商品であるコーヒー豆の仕入れを一手に引受け、対内的にも労務管理や経理処理も行うなど広い範囲に及び、会社の経営や業務の枢要部分を担っていたことが認められるところ、このような原告の地位・業務内容や会社の規模に加え、原告の収入額が、他の業務に携わっている社員や従業員と比較しても高額でなく、むしろ多くの従業員よりも低額であることなどに照らすと、原告が、本件事故当時得ていた月額23万0193円の収入はその全額が労務対価として支給されていたと認めるのが相当であるとしました。
他方で、原告は、退院後は、体調が十分でない状態とはいえ本社に通勤するなどして一定程度稼働していたことが認められ、原告本人の供述によっても、ある程度の業務の遂行は可能であったと認められること、原告の収入は減額傾向にあり、他の役付従業員の給与額も同様の傾向にあったこと、会社の営業利益は赤字であり、本件事故当時は、最大の取引先から取引の縮小及び取引中止を告知されており、そのことをふまえて事業縮小の計画が進められていたとはいえ、その効果や影響は不透明であったことなどを考慮すると、本件事故後の原告の収入の減額分についてその全てが休業によるものと評価することはできず、休業損害は、減額分(月額23万0193円から20万2193円への月額2万8000円の減額分につき、19ヵ月と19日分の396万5591円)の5割である198万2795円が相当であるとされました。
なお、上記事案においては、治療費、入院諸雑費、通院交通費、後遺障害診断書料、休業損害、慰謝料、逸失利益等の合計1145万0851円の損害が認められています。
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