後遺障害14級の場合に労働能力喪失率表より高い労働能力喪失率10%を認めた事案
後遺障害14級の多くの事案では労働能力喪失率が労働能力喪失率表に従い5%と認定されるところ、労働能力喪失率10%と認定された事案があります(東京地裁平成13年8月29日判決)。
上記事案においては、症状固定日後も、原告が、後遺障害による症状を緩解させるためにかなりの日数の通院を自費負担で継続しており、原告の後遺障害による痛み、しびれ等は症状固定後もなお重い状態であったことがうかがえ、稼働能力が未だ十分には回復していない状態が継続していたことが認められました。
また、原告が石工であり、巧緻な手作業と集中力を要求される石工の仕事に復帰することができず、建築墨出測量(建物建築時に図面に基づき柱や床等の寸法をメジャーで測り設備等の取付位置等に墨打ちする作業等)に従事していること、その賃金は同僚と同等の賃金額ではあるが石工のときの賃金額に比べて大幅に低下していること、そのほかにこれまでに道路のライン引き、トラック運転、タオル配達・運搬、建築現場掃除等の種々の職種での仕事をなし、かつ、同僚に比べて待遇の上で差別を受けたことはないものの、作業遂行上左手を自在に使えないため右手で補わなければ不自由さが今なお継続していることが認められました。
上記の結果、原告の後遺障害は、局部の神経症状として後遺障害一四級一〇号の評価が相当ではあるものの、原告の本件事故当時の職業(石工)とその仕事遂行上の特殊性(巧緻な手作業と集中力が不可欠であること)、原告の後遺障害部位(頭部、頸部、左上肢、左手)、収入の激減状況等の事情を総合的に考慮すると、原告の労働能力喪失率を認定するに当たっては、認定等級から直ちに労働能力喪失率を決定するのは相当ではなく、その喪失の程度を一〇パーセントと評価するのが相当であるとされました。
なお、上記事案においては、既払金を含めて、治療費、入院雑費、交通費、休業損害、逸失利益、後遺障害慰謝料等の合計880万4616円の損害が認められています。
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